「塗り薬も抗菌薬も使ったのに、また同じところにできる」
そう言って来られる方に、次の手としてお話しするのがアビクリアとイソトレチノインです。
どちらも皮脂腺に働きかける治療ですが、アプローチは異なります。アビクリアはレーザーで外から皮脂腺に熱を届け、イソトレチノインは飲み薬で全身から皮脂の分泌を抑えます。そのため、通院の回数や必要な検査、治療中の生活上の注意点も変わってきます。
診察では「どちらのほうが効きますか」とよく聞かれますが、この2つは単純に優劣を比べるものではありません。ニキビの重症度や範囲、ライフスタイルによって、合う治療は変わります。この記事では、それぞれの仕組みと違い、当院での使い分けについてご説明します。
- アビクリアは外からのレーザー。4〜6週ごとに3回が基本です。飲み薬は使いません。
- イソトレチノインは飲み薬。数ヶ月毎日続け、その間は定期採血が要ります。女性は避妊の管理も必要です。
- アビクリアは国内承認済み(承認番号:30700BZX00107000/クラスⅢ)、イソトレチノインは未承認。どちらも自由診療です。
- 同時の併用は行っていません。内服を終えてからアビクリアに移ることはできます。
- すでに凹んだニキビ跡には、どちらも効きません。
ニキビの重症度と、標準治療の位置づけ
どの治療を選ぶかは、重症度で決まります。日本皮膚科学会の『尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023』は、片側の顔にある赤ニキビ(炎症性皮疹)の数で4段階に分けています。
| 重症度 | 片顔の赤ニキビの数 |
|---|---|
| 軽症 | 5個以下 |
| 中等症 | 6〜20個 |
| 重症 | 21〜50個 |
| 最重症 | 51個以上 |
中等症以上なら、まず保険診療です。アダパレンと過酸化ベンゾイルの配合ゲル、クリンダマイシンと過酸化ベンゾイルの配合ゲル、ドキシサイクリンやミノサイクリンの内服。いずれも推奨度Aがついています。
アビクリアもイソトレチノインも、その次の手になります。ただ「塗り薬が合わなかった」という方に詳しく聞くと、最初のひりつきで数日のうちにやめていた、ということが少なくありません。塗る量や順番を変えるだけで続けられる方もいます。
※同ガイドラインでは、レーザー・光治療は炎症性皮疹に対して推奨度C2(現時点では推奨しない)とされています。ただし1726nm波長のレーザーを個別に評価した記載はありません。イソトレチノインも国内未承認のため、推奨としての記載はありません。どちらも、標準治療の位置づけを踏まえたうえでご相談のうえ選択する治療です。
アビクリアの仕組み|外から皮脂腺に熱を入れる
1726nmという波長は、皮脂腺の中の脂質に吸収されやすい性質があります。そのため、皮膚表面へのダメージを抑えながら、深いところにある皮脂腺を選択的に狙って熱を届けることができます。熱を受けた皮脂腺は働きが落ち、皮脂の量が少しずつ減っていきます。
照射中は「アビクリア・エバークール(AviClear EverCool™)」が皮膚の表面を冷やし続けます。1回およそ30分、4〜6週間隔で3回が基本のプログラムです。
メラニンにはほとんど反応しない波長です。色黒の方、日焼けしやすい方でも照射できます。ただし、日焼けした直後の照射は避けます。
国内では「中等症から最重症の尋常性ざ瘡」を対象として製造販売承認を受けた医療機器です(承認番号:30700BZX00107000/クラスⅢ)。承認された機器ではありますが、ニキビへの照射は保険の対象ではなく、自由診療になります。
イソトレチノインの仕組み|飲み薬で皮脂腺そのものを抑える
ビタミンA誘導体の飲み薬です。皮脂腺そのものを縮小させます。体重に応じた量を、数ヶ月のあいだ毎日飲み続けます。
飲み薬なので、背中や胸にも同時に作用します。そのぶん副作用も全身に出る可能性があります。肝機能と脂質の数値は定期的な確認が必要で、催奇形性があるため妊娠は禁忌です。
欧米では重症ニキビの治療薬として承認されていますが、日本では承認されていません。そのため自由診療になり、医師の責任のもと個人輸入で入手します。
2つの違いを一覧で比較
| アビクリア(レーザー) | イソトレチノイン(内服) | |
|---|---|---|
| 作用する範囲 | 照射した部位だけ | 全身。背中・胸にも働く |
| 通院・期間 | 4〜6週ごとに3回が基本。毎日の手間はなし | 数ヶ月の連日内服。定期受診と採血あり |
| 採血 | 不要 | 肝機能・脂質を定期的に確認 |
| 妊娠・避妊 | 妊娠中(可能性のある方も)は不可。避妊管理は不要 | 催奇形性あり。妊娠は禁忌で、服用中と前後の避妊が必須 |
| 主な副作用 | 一時的な赤み・腫れ・熱感・乾燥、ニキビの一時的な悪化など | 口唇や皮膚の乾燥、筋肉痛、肝機能障害、脂質異常、光線過敏、抑うつなど |
| 日焼け・肌色 | メラニンへの吸収が少なく、幅広い肌色に対応(日焼け直後は避けます) | 光線過敏が出ることがあり、紫外線対策が必要 |
| 費用の見え方 | 回数と部位で総額が先に決まる | 30日分ごとの薬代。内服期間で決まる |
| 国内承認 | 承認済み(承認番号:30700BZX00107000/クラスⅢ)。自由診療 | 未承認。自由診療 |
※一般的な比較です。適応やリスク、見込める効果は重症度・体質・生活背景によって変わります。
どちらを選ぶか|判断の分かれ目
診察ではまず、これまでどんな治療をしてきたかをうかがいます。保険診療の外用薬と内服薬をひととおり試したうえで落ち着かない場合に、アビクリアやイソトレチノインの話になります。逆に、外用薬を数日でやめてしまっていたり、抗菌薬の内服が1〜2週間で終わっていたりする場合は、そちらを立て直すところからお勧めしています。
そのうえで判断材料になるのが、通院と管理の負担です。アビクリアは4〜6週おきに3回、数ヶ月のうちに終わりますが、1回あたりの費用は高めです。イソトレチノインは1ヶ月単位の薬代なので出費は分散するかわり、毎日の服薬と定期的な採血が前提になり、女性の場合は避妊の管理も加わります。出張が多くて通院の予定が立てにくい方と、毎日薬を飲むほうが気にならない方とでは、無理のない選択が変わってきます。
ニキビが出ている範囲も関係します。顔だけであればアビクリアで対応できますが、背中や胸にも広がっている場合、照射ですべてをカバーするのは現実的ではないので内服を検討します。しこりのような硬いニキビが続いていて、このままでは瘢痕が残りそうだというときも、内服を先に考えます。
こんな方に向いています/注意が必要な方
- 繰り返す中等症〜重症のニキビで、皮脂やテカリも気になる
- 採血や避妊管理の負担は避けたい
- 色黒・日焼けしやすく、レーザーをためらっていた
- 保険診療で改善しない重症・最重症のニキビ
- 背中や胸にも広く出ている
妊娠中(妊娠の可能性がある方を含む)、皮膚がんの治療中、施術箇所に美容整形をしている方は照射できません。イソトレチノインを内服中の方は、内服が終わるまでお待ちいただきます。授乳中、光過敏症、施術部位に重度の皮膚疾患や感染症がある方、ケロイド体質、抗凝固剤を服用中、自己免疫疾患、てんかんの既往がある方は、お控えいただくか慎重に判断します。
どちらも、これから増えるニキビを抑えるための治療です。すでにできてしまった凹みや色素沈着に対しては効果がありませんので、フラクショナルレーザーなど別の治療をご提案します。
併用について|同時には行わない理由
「両方いっぺんにやったほうが早いのでは」と聞かれることがありますが、同時には行っていません。アビクリアは皮脂腺の中の脂質に熱を集める仕組みなので、イソトレチノインで皮脂の分泌が大きく減っている状態だと、狙ったところに熱が入りにくくなります。乾燥や刺激といった副作用も重なります。
内服を終えたあとにアビクリアへ移ることは可能です。どのくらい間隔をあけるかは、乾燥の程度や肌の落ち着き具合を診てから決めています。内服中にアビクリアをご希望の方には、内服が終わるまでお待ちいただいています。
症例のご紹介
当院で治療を受けられた方の経過です。効果の出方には個人差があります。
アビクリア
アビクリア(全顔)2回照射
イソトレチノイン
イソトレチノイン(20mg)180日間内服
料金(税込・自由診療)
どちらも保険適用外の自由診療です。アビクリアの料金は千里中央院・みのお院で共通です。
| 部位 | トライアル | 1回 | 3回セット |
|---|---|---|---|
| 全顔 | 66,000円 | 88,000円 | 198,000円 |
| 両頬+鼻 | 44,000円 | 66,000円 | 132,000円 |
| 両頬 | 33,000円 | 44,000円 | 99,000円 |
| 鼻/おでこ/こめかみ/鼻下/顎(各) | 17,600円 | 33,000円 | 52,800円 |
※アビクリアは別途、初回カウンセリング・診察料 1,100円(税込)がかかります。
| 内服薬 | 価格 |
|---|---|
| イソトレチノイン(20mg)30日分 | 16,500円 |
※イソトレチノインは海外医薬品代・診察料を含む金額です。
副作用・リスクについて
アビクリア
- 一時的な赤み・腫れ・熱感。多くは数時間から1日で落ち着きます。
- ニキビの一時的な悪化。主に1回目のあとに起こることがあり、数日から1週間ほどで落ち着きますが、数週間続く方もいます。
- 乾燥。保湿ケアで対応します。
- ごく稀に炎症後色素沈着、非常に稀に軽度のやけど。
イソトレチノイン
- 催奇形性があり、妊娠は禁忌です。服用中および服用前後の避妊が必須になります。
- 口唇・皮膚・鼻粘膜の乾燥、鼻出血。
- 肝機能障害、脂質異常。定期的な採血で確認します。
- 筋肉痛・関節痛、光線過敏。
- 抑うつなどの精神症状の報告があります。気分の変化を感じたら、すぐにご相談ください。
- 治療の初期に、一時的にニキビが悪化することがあります。
効果も副作用も、程度には個人差があります。気になる症状があれば遠慮なくご相談ください。
よくあるご質問(FAQ)
効果が高いのはどちらですか?
並べて比べられるものではありません。背中や胸にも広く出ている、あるいは重症・最重症という場合は内服を検討します。顔の皮脂とニキビを落ち着かせたいというご希望なら、アビクリアが候補です。
効果はいつごろ出ますか?
どちらもすぐには変わりません。アビクリアは照射を重ねるうちに数週間から数ヶ月かけて、イソトレチノインは内服を続けるうちに変化していきます。出方には個人差があります。
併用はできますか?
同時には行っていません。内服で皮脂が減っている状態ではレーザーの熱が入りにくく、乾燥や刺激も重なるためです。
内服からアビクリアに切り替えられますか?
できます。内服を終えてから一定期間おいて照射します。間隔は肌の状態を見て決めますので、診察でご相談ください。
費用はどちらが高いですか?
期間と部位で変わるので、一律には言えません。アビクリアは回数と部位で総額が先に決まります。イソトレチノインは30日分16,500円(税込)で、飲む期間が長くなるほど積み上がります。
日焼けした肌や色黒でも受けられますか?
受けられます。アビクリアはメラニンへの吸収が少ない波長です。ただし日焼けした直後は避けますので、照射前後の紫外線対策をお願いしています。
ニキビ跡(クレーター)も治りますか?
凹んでしまった跡には効きません。どちらもこれから増えるニキビを抑える治療で、跡そのものにはフラクショナルレーザーなど別の治療が必要になります。
ご予約・ご相談(千里中央・みのお)
繰り返すニキビ、皮脂、毛穴のお悩みに、皮膚科専門医が肌の状態と重症度を診たうえで、レーザーと内服のどちらが合うかをご提案します。どちらにするか決めていない段階でもかまいません。
【自由診療・リスクに関する説明】アビクリアは自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は本文の料金表をご参照ください(別途 診察料1,100円・税込)。効果の現れ方や必要回数には個人差があり、効果を保証するものではありません。主なリスク・副作用として、一時的な赤み・腫れ・熱感・乾燥、ニキビの一時的な悪化、ごく稀に炎症後色素沈着、非常に稀に軽度のやけどが生じることがあります。妊娠中(妊娠の可能性がある方を含む)、皮膚がん治療中の方、施術箇所に美容整形をしている方は施術ができません。また、授乳中、光過敏症、ケロイド体質、抗凝固剤を服用中の方、自己免疫疾患、てんかん既往などの方は施術をお控えいただく場合があります。日焼け直後の肌への照射は避けてください。アビクリアは国内で製造販売承認を取得した医療機器です(承認番号:30700BZX00107000/クラスⅢ)。
【比較として挙げたイソトレチノインについて】イソトレチノインは、日本国内では医薬品医療機器等法上の承認を受けていない未承認医薬品であり、使用する場合は自由診療(公的医療保険適用外)となります。医師の責任のもと個人輸入により入手します。欧米をはじめ諸外国では重症ニキビの治療薬として承認・使用されていますが、催奇形性のほか、肝機能障害・脂質異常・光線過敏・抑うつ等の重篤な副作用が報告されています。イソトレチノインと同一の有効成分を含む国内承認医薬品はありません(尋常性ざ瘡に対しては、アダパレン外用・過酸化ベンゾイル外用・抗菌薬内服などの国内承認薬があります)。個人輸入した医薬品による健康被害は、医薬品副作用被害救済制度の対象となりません。
適応・リスクの詳細は診察時に皮膚科専門医が説明いたします。本記事は医療広告ガイドラインに基づく情報提供であり、特定の効果を保証する広告ではありません。
